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――ワンペside――
お兄さんの浴衣の懐から顔を覗かせれば、そこに居たのは朝のオッサン達。
その中、一人だけ毛色が違うヤツがいた。
「アンタら……こんなガキにやられたってのか?」
低い声。
特に動きもなく発せられた声のみで地上げ屋達が身震いしてる。
「こ、コイツやたらすばしっこくて」
「そんな事は聞いてない」
「こ…コイツにやられました」
怯えた表情。地上げ屋なんて仕事をしてる連中を言葉一つで黙らせる威圧感はなかなかだね。
「そうか。ウチの連中が世話になったみたいだな」
黒スーツがお兄さんに向かって口を開いた。
「いや、別に世話はしてませんよ。火の粉がコッチまで飛んできたから払っただけで」
てか、意外とお兄さんって肝が据わってるよね。一般的にはこの状況ってビビって震え上がる場面だよね。
ま、負けない相手にビビる必要もないからなんだろうけど。
「ふむ。しかし俺達にもメンツってモンがあってな。お前をそのままにしておくと、後々面倒事が増えるんだよ」
「つまり俺をフルボッコにする……と?」
「ふるぼ…?最近の若いヤツが使う言葉は分からんが、落とし前は着けさせては貰うって事だ」
「把握した」
お兄さんの言葉が終わった瞬間、空気が変わる。
重苦しい威圧感。
敵意や殺気と呼ばれる独特の刺さるような空気を放つ黒スーツ。
それに対してお兄さんは―――鼻をほじっていた。
あ、取れたハナクソをオッサンの一人に向けて弾き飛ばした。
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