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「汚ねえっ!」
叫んで避けたオッサンを口火に黒スーツがお兄さんに向けて踏み込む。
打ち出された黒スーツの右拳をお兄さんは右手を払うようにして軌道を反らす。
「いい反応だ」
「お褒め頂きど―――」
言いかけたお兄さんの腹部目掛けて黒スーツの蹴りが飛ぶ……って、僕が隠れてんのに腹部に攻撃すんなぁぁぁ!
「――うも…っと」
そんな心配も杞憂に終わる。お兄さんが真っ直ぐに伸びてきた蹴り足を叩き落としたからだ。
でも、黒スーツの攻撃は止まらなかった。
叩き落とされた足をそのまま踏み込みの軸足にして一気に接近、身体を捻るとお兄さんの肩口目掛けて鋭く肘が襲う。
その肘を半身に下げる事で避けたお兄さんは間髪入れず右拳を下から打ち抜くように振り上げる。所謂アッパーだ。
肘打ちを空振りした黒スーツは下から襲い来るアッパーを首を捻ることで避ける。
振り上げられた右拳は黒スーツの髪を数本引き千切るに止まり空を切った。
「っ…はぁっ!」
振り上げられた右拳によって隙が生まれた右脇腹、そこを狙って黒スーツの掌底が叩き込まれる。
「ぐへっ」
脇腹を押さえて数歩下がったお兄さんに黒スーツは不敵な笑みを浮かべていた。
「久しぶりにまともな喧嘩が出来そうだ」
「そりゃどうも」
軽く言うお兄さんだけど口調は少し苦しそう。
かく言う僕も懐でグルングルンで気持ち悪い。いつか色々なモノをブチ撒けるかもしんない。
懐の中で。
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