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「行くぞ!」
叫ぶと同時に黒スーツが間合いを詰めて右回し蹴りを放つ。狙いはお兄さんの側頭部だ。
しかし、お兄さんは受け止める訳でもなく、後ろに下がる訳でもなく、前進して蹴りの威力を殺すと同時に黒スーツの腹部に下から抉り込むように肘を叩き込む。
「っぐ!」
短い苦鳴と共に黒スーツは後ろによろけるが、そこにお兄さんの追撃の蹴りが襲う。
標的まで真っ直ぐに伸ばされた蹴り足は、黒スーツがガードの為にとっさに上げた両腕に当たり、蹴りとしてのダメージは与えられなかったものの、その身体を大きく後ろに吹き飛ばした。
この攻防に要した時間は数秒程、オッサン達に視線をやれば呆然と立ち竦み口がだらしなく開いている。
ま、一般人がこんなハイスピードな攻防を見せられたらそんな反応になるよね。
こんなハイスピードな攻防?
おかしい。
お兄さんは契約者。肉体能力はかなり引き上げられている。
それこそ凶器を持ったK-1選手相手を翻弄出来るほどに。
人としての枠を逸脱した能力を与えられるアーティファクト。それがレーヴァティンとなれば尚更だ。
いくら先日まで一般人、素人だったお兄さんとは云え、黒スーツが対等に戦える相手ではない筈。
これらの僕の推論が正しければ、導き出される答えは一つ。
QED.
黒スーツも何らかの契約者の可能性がある。
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