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「くっ!」
これは予想外。どうやら今剣の使い方は攻撃より防御に向いてるらしい。
腹への一撃を受け、たたらを振む俺に黒スーツは追撃とばかりにその場で今剣を袈裟に振るう。
俺と黒スーツの距離は大股で二歩ほど。刀身の短い今剣の刃がとどく距離ではない。
しかし、俺を襲ったのは刃は刃でも今剣から生まれた衝撃波という名の刃だった。
たった二歩という距離から放たれた衝撃波は体勢を崩した俺に避けられるハズもなく命中。廊下を激しく奥に転がるハメになる。
「おいおい、さっきまでの方が動きが良かったぞ」
余裕の表情で床に伏せる俺を見下ろす黒スーツ。
「ちょっと油断しただけだ」
ダメージ自体はそれ程無い。
足を振り上げ、下ろした反動で一気に上体を起こし立ち上がる。
「んじゃ、次は俺の番だな―――ふっ!」
言い終わると同時に床を蹴る。
全力でレーヴァティンを振り下ろすと黒スーツは今剣で斬撃の軌道を逸らす。
全膂力を込めた一撃だ。短い今剣で受け止められる訳がない。
ニヤリと笑みを浮かべた黒スーツだが、俺の攻撃は斬撃が本命じゃない。
振り抜いた勢いもそのままに床を蹴って前方宙返りの要領で片足を伸ばし、黒スーツの肩口に踵を叩き落とした。
「ぐあっ!」
余裕の表情は一瞬で苦痛の表情に変わる。
辛うじて倒れることなく、今剣を支えに片膝を着いた黒スーツに俺は言い放つ。
「おいおい、さっきまでの方が動きが良かったぞ」
ぷっ。言ったこと言い返される気分はどうだ?
悔しい?悔しい?
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