Enemy『はぐれ契約者』

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力ある言葉により術が発動。 俺の背後から無数の漆黒の鎖が生み出され、鎖独特の金属音を発しながら黒スーツの放った無限の刃を絡め捕る。 物量的には無限とも思われた小刀だが、無数の漆黒の鎖は一本で複数本の小刀を無力化していく。 そんな中、一本の鎖が黒スーツの足を捉えた。 集中が切れた為か無数に襲い来る小刀は消滅し、消えた小刀を絡め捕っていた鎖はカチャリと音を立てて床に落ちる。 しかし、黒スーツに絡み付いた鎖は自らが意思を持つかのように絡み付いた足を這い上がり胴体を締め付けていた。 必死に鎖に今剣を叩き付け切断しようとする黒スーツだが、漆黒の鎖は斬れるどころか傷一つ付きはしない。 勿論これで終わりじゃないぞ。 小刀が消えたせいで床に落ちていた無数の鎖は、蛇が地を這うように黒スーツへと襲い掛かる。 たった一本の鎖に動きを妨げられていたのに追加で現れた無数の鎖を前に黒スーツが何を思ったのか……俺が知る由はない。 「う…ああああああああ!!」 叫びと共に黒スーツが今剣を床に落とす。ガチャンという音と共に今剣は鎖が黒いとぐろを巻く中に埋もれ消えた。 黒スーツの姿はすでに漆黒の鎖で覆われ顔の一部が見えるのみ。 右腕が肩から手首にかけて変な方向に三箇所折れ曲がっているのが今剣を落とした理由だろう。 俺を剣山にした代償が腕一本か……安いな。もう一本逝っとけや。
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