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それは日本一周の旅も最後の県、沖縄での出来事だった。
「どうよ?北海道原産のナマモノが最南端の沖縄に来た感想は」
ギラギラと照りつける日差しを旅の間に買った麦藁帽子で柔らかく遮り、俺の肩でダレるワンペに話し掛ける。
「原産言うな原産。つか暑すぐる……干物になりそうだよ」
言いながらも俺の肩で腹を下にしてグッタリしているのだから本当に暑さが辛いのだろう。
「アジの開きか?スルメか?」
「スルメだね」
「んじゃ、日の当たる場所の海風で干すか」
「ああ、お兄さんに僕の魅惑の肢体が美味しく食べられ…きゅう」
どうやら北海道原産のワンペに沖縄の暑さは本当に堪えるらしい。そのまま気を失い動かなくなった。
「なあワンペ」
「……………」
返事がない ただの屍のようだ。
仕方無いな。支部への挨拶は一人で済ますとするか。
◇◇◇◇◇
「ご苦労様でした」
「そんじゃ、何か有りましたら池袋支部の三宅さんまで」
何時もの社交辞令を交わして日本最後の支部巡りは幕を下ろした。
次は成田まで戻って世界の支部巡りだ……うは、ダリい。
車に乗り込みエンジンをかければ響く重低音。
空は曇天、いつ降り出してもおかしくない天気だ。
フェリーの時間にはまだ余裕があるが、この天候じゃ観光してる余裕は無さそうだし大人しくフェリー乗り場で時間を潰すとするか。
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