Another『魔法遣い』

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立ち上がり膝をパンパンと払った美人さんは再び詠唱し、数秒後には霞のように姿が掻き消えた。 肩がプルプル震えてたのは見なかったコトにしてやろう。 しかし、瞬間移動か。アレが使えると云うことは結構高位のアーティファクト契約者みたいだな。 しかも、明らかにソレと分かるアーティファクトは見て取れなかった。 つまりそれは、見た目でソレと分からないアーティファクトなのか、アーティファクトを呼び出さずとも術を発動出来るくらい術に特化したアーティファクトと云うことだ。 どちらにしろ敵に回せば、無害を装っていきなり必殺の威力を持った攻撃が飛んでくる事になる。 まるで魔法遣いみたいだな。 是非とも敵には回したくない相手だ。 まあ、それ以前に紳士が女性と戦うなんぞ有り得んがな。 美人さんが完全に消えると同時に結界は解かれ視界に色が戻る。 幸いにも周囲に人影は少なく、誰も俺の事に気付いてないようだった。 さすがに船内なんて狭い場所で消えたり出たりを見られたら騒ぎを収めるのが大変だしな。 さて、貰った名刺を見てみれば、名前と携帯番号が書かれただけのシンプルなもの。 「七瀬睦美(ななせむつみ)……か」 俺はどうしたら良いんだろう。 現時点では七瀬さんの言うことを完全に信じた訳ではない。 かと言って、嘘だと言える根拠も無い。 マイスとアナザー。 アーティファクトと神様。 ゲーム盤と魔物。 ちょっと真面目に考えんと、今後の展開に支障をきたしそうだ。 魔物だけ退治してれば金になると思ってたら、とんでもない方向に話が進みやがった。 もう俺に平穏は訪れないのかな……
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