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好奇心のままに奥に歩を進めれば、廊下には灯りもなくなる。
「これ以上は無理だな」
「暗くて見えないしねえ。ま、僕は見えるけど」
いちおう分類は魔物なだけあってワンペは夜目が効くらしい。
「おまいだけ見えても、俺が見えなきゃツマランわ。戻るぞ」
「でも、奥にキレイなお姉さんが寝てるよ」
来た道を引き返そうとした時、ワンペから放たれたその一言は俺の足を止めるに充分だった。
「よし、進むぞ」
「自分に正直なお兄さんが好きだよ」
誉めるなワンペよ、照れるではないか。
それからワンペの指示通り進み、一つの格子戸の前に辿り着いた。
視界は最悪、周りを支配するのはほぼ完全な闇。
燭台の灯りは廊下の向こうでうっすらと見える程度だ。
「キレイなお姉さんはどこだぁぁぁぁぁ!」
「目の前で寝てるけど……この暗さじゃお兄さんには見えないか」
なん……だと……
目の前にあるキレイなお姉さんの寝顔を見れんと言うのか。
いや、待てよ。灯りさえあれば問題ない訳だから、灯りを点ければ良いだけの話じゃまいか。
俺は無言で右手を前に伸ばす。
指先に触れた馴染みの感触を握り締め、一気に右腕を後ろに引いた。
その手に収まっていたのはレーヴァティン。
相変わらず邪悪な空気を振り撒く悪役……四天王以上クラスの武器です。
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