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―フィアside―
振り上げられたレーヴァティンには炎が煌めき、炎に照らされるユーヤの顔は薄く微笑んでいた。
「解けないなら、ぶった斬る」
「え、ちょっ―――」
無理だ!
グレイプニルは序列上位のアーティファクト。いくらレーヴァティンとは云え斬れるはずがない。
だいいち手元が狂えば私の足が飛ぶのよ!
そう考えると恐怖で身体は硬直し、目は瞼を落とす。
キンッ
小さな金属音。
衝撃は一切無かった。
薄く目を開けば、足に巻き付いていたグレイプニルはバラバラになって床に落ちている。
キンッ
再び鳴った金属音に視線を上げれば、そこにユーヤの姿はない。
不意に両肩と両腕に開放感が訪れたのに気付く。
「俺ってばカッコよす」
聞こえた声は後ろから。
振り向けばユーヤがレーヴァティンを肩に担ぐようにドヤ顔を決めていた。
「こ……」
「ん?感謝感激の余りに声が出ないか?」
「怖かったんだからぁぁぁ!!」
自由を取り戻した右手は握り拳を作り、ユーヤの左頬に吸い込まれた。
「あべしっ!」
狭い部屋なので倒れる事も出来ずにユーヤは壁に貼り付く。
「ほ…北斗七星の脇に寄り添い輝く星が見える……」
「ダメだよお兄さん!それは死兆星だから見ちゃダメ!」
遠い眼差しで人差し指を天井に向けて呟くユーヤと、それに突っ込むワンペ…君?ちゃん?
二人のやり取りは息が合ってて何だか楽しそう。
ちょっと妬けるかも。
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