11369人が本棚に入れています
本棚に追加
/317ページ
―フィアside―
ワンペちゃんが……
グレイプニルに拘束されたままのワンペちゃんは動かない。
涙が零れ落ちる。
左肩に突き刺さるフルンティングの痛みからじゃない。短い時間とはいえ同じ時間を過ごしたワンペちゃんを失ったことに対する涙だ。
「コイツらをぶち殺せる力を俺に寄越せえぇぇぇ!!」
悲しみから雄叫びを上げるユーヤだが、この場に残ったのは私とユーヤだけ。
もう助かりはしない。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
バキンッ
ウソ……信じられない。
ユーヤを拘束するグレイプニルが圧力に押し負けるように甲高い音を立てて内側から弾け飛んだ。
「なにッ!」
セブンデイルの動揺が私の左肩に刺さるフルンティングを揺らし激痛が走るが、そんな痛みなど気にならなくなるような事態が起こる。
拘束を解いたユーヤは一瞬でワンペちゃんを拘束するグレイプニルを素手で断ち切り、制御を失った鎖から動かなくなったワンペちゃんをそっと取り出す。
「俺が弱かったせいで……悪かったな」
呟いたユーヤはその場にワンペちゃんを横たえると姿を消した。
文字通り姿が消えたのだ。
さっきまで居た場所に残るのは死んでしまったワンペちゃんのみ。
視線を回せば消えたユーヤの姿が映る。
そこはシックスの前。
いつの間にか奪取したレーヴァティンをシックスの首筋に沿わせている所だった。
最初のコメントを投稿しよう!