Prologue『そんな感じ』

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独り言は孤独を誤魔化す為のものなのかもな…… 心理学は専攻していなかったので合っているかは解らないが、そんな気がした。 少し気持ちが落ち着いた事もあり、再度思考を巡らせる。 遭難した場合の鉄則は『むやみやたらに動かない』だ。 しかしそれは救助が期待できる場合に限る。今の俺の状況はと言えば、海外旅行に出たのを知っているのは仲の良い友人が数人だけだ。 だが、その友人達も日本にいるので、俺が此処で遭難していることに気付く由もない。 つまり…… 「救助は来ない!」 口に出すとちょっとスッキリしたが、代わりに鬱な気持ちが込み上げてきた。泣いちゃおっかな…… しかし、救助が来ないからと云って動き回るのは愚の骨頂だ。 「ここは慎重に……来た道を戻ろう」 バックパックを背負い直し、来た道を戻り始める。森に入って歩いた時間は一時間程だ。まだ十分に間に合う距離だろう。 そう思いつつ歩を進めるが、既に来た道と違う道を歩いている事に気付かない俺は順調に愚の骨頂を極めつつあるのだった。  
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