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「What?」
「ホワットじゃねーよ!何をさらっと危険なコトさせようとしてやがる!」
「だってworkしないと私を養えないじゃない」
「まてまてまてまて、話が飛びすぎだ。それに俺は仕事に命を賭けるほど素晴らしい人間じゃない」
いつまで続くんだ、このやり取りは?ここはキッパリと養う気も付き合う気も無いことを言っておかねば―――痛っ!
不意に痛んだ右手を見れば、手の甲が浅く切れうっすらと血が流れ出していた。
すぐ後ろには細身の一本のナイフが畳に突き刺さっている。
「日本のコトワザにあったわよね、『論より証拠』だっけ?話すより実際経験した方が分かり易いわよね」
この野郎、実力行使に出やがった。だいいち、この場合は『百聞は一見に如かず』だ。ん?違うか。
怒りにひくつく頬をそのままに右手を見れば、溢れ出す血が中指に嵌る指輪をベットリと濡らしていた。
うわぁ……今度こそ詰んだな。
自慢じゃないが、余裕で自我を失わせるような状況に耐えられない自信がある。
本当に自慢じゃないな。
「good luck!」
「グッドラックじゃねぇぇぇぇぇ――あふぅ」
決して叫んだ事による高血圧で意識を失ったのではない。
それはまるで、死神に意識を刈り取られたかのように俺は倒れ伏す。
最後に残った記憶は、やけに熱く感じる右手に嵌る指輪のことだった。
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