link『俺の邪気眼発動』

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「いくらなんでも家賃一年は溜めすぎだと思わないかい?」 大家の言葉に黒スーツの男2人は俺の両脇をガッチリとホールド。 「家財一式は家賃の補填として此方で処分させてもらうから」 そこまで言うと、大家は男2人に目配せした。 目配せを受けた男2人は俺を引き摺るように部屋の外に出ると背中を押して放り出す。 ふらふらとした足取りで手すりに捕まり後ろを振り向けば、俺と部屋の間に立ちふさがる黒スーツの男2人。 姿が見えない大家は、部屋の中で売り払える家財の検討に入っているのだろう。 冬の暗くなり始めた空の下、背中を丸め階段を降りだした俺に3年間履き古された靴が投げつけられた。 ◇◇◇◇◇ あれから数年。河川敷の鉄橋の下、ダンボールで囲った一角が俺の住処だ。 働きたくとも住所を持たない俺を雇ってくれる会社はない。 それ以前に、数ヶ月風呂に入っていないので門前払いを受けてしまう。 「不幸だー……」 呟きは鉄橋を走る電車の騒音に掻き消された。 ◇◇◇◇◇ 頭頂部はすっかり薄くなり、着ている服は既にボロ布と化している俺の前にはニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべた数人の若者。 長い脱色された髪に顔の様々な位置に着けられた無数の色とりどりのピアス。 そして、その手に握られているのは木刀や金属製のパイプ。 怯える俺に向かって若者達は凶器を狂気を振り翳し……  
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