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無限にも思える時間、俺は若者達からの暴行を受けていた。
額が割れたのか、生暖かいものが額から頬にかけてベットリと濡らしている。
数年まともに食べていない体には力が入らず、反抗する気力も湧いてこない。
これがニュースにもなっていた若者達による浮浪者狩りか。まさか自分がその境遇に置かれるとは思ってなかった。
ああ……体から力が抜けて意識が遠くなってきた………………
おや?遠くなった意識がはっきりし始めたし、体の倦怠感も痛みも薄れてる。
ぼやけてた視界もしっかりと見えるし、息苦しさもない。
いつの間にか若者達からの暴行が止んでいたことに気付いた俺は顔を上げると、そこには冷めた眼差しの若者達が一点を見つめる姿があった。
その視線を追ってみれば、そこに立つ1人の女の子の姿。
夕日を背に綺麗な茶髪のポニーテールを風に靡かせ、一本の杖を持つ立ち姿は一枚の絵のよう。
誰だ?……いや、知ってる気がする。俺は彼女を知っている。だが思い出せない。
「立ちなさい!立って戦いなさい!Youの力はそんなものなの!? 」
地面に伏したまま、頭を巡らせる俺にその女の子は声を上げた。
「俺の……力?」
女の子の言葉に立ち上がった俺は土に汚れた両手を見る。
そこには先程までの深いシワが刻まれた手はなく、若々しく張りのある両腕があった。
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