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不思議な感覚だ……
眼前のカノッサ機関の手先達を俺の放ったエターナルフォースブリザードが包み込む。
身動きする事すら赦されず、氷柱と化していく若者達だが俺の心には何も訪れない。
魔法を使った高揚感も、敵を倒した爽快感も、人を殺すことに対する罪悪感も……
その心にあるのは虚無感のみ。
先ほどまでのテンションが嘘のように心にぽっかりと穴が空いたような不思議な感覚。
そんな俺の頭に突然声が響く。
『力が欲しいか……』
耳から聞こえるのではなく、直接頭に響く声。
『力が欲しいか……』
響く声は男の声。その重厚な声は空虚な俺の心に響き渡る。
『力が欲しいか……』
そうだな……俺は力が欲しい。
暴力に負けない力を
権力に負けない力を
世界の理不尽さに負けない力を
何よりも……
俺の生活を守れる力を!
『ならばくれてやろう!貴様の求める力を!』
何か抜け落ちたように虚無感に苛まれる俺の心。
そこにピタリと合うピースがはまった感じがした。
何故か溢れ出す哄笑。
とくに可笑しいわけでも楽しいわけでもない。
言うなれば……そう。心が、身体が喜んでいるのだ。
今までにない新しい力を手に入れたことに。
「ユーヤ……私が止める!」
さっきから誰だっけか?あの女の子?記憶の片隅に引っかかって出てこない。
奥歯の間に肉の破片が挟まった時のようなもどかしさが俺を襲う。
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