Resist『予想外の現実』

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ま、いっか。思い出せないってコトは道ですれ違って何となく記憶に残ってる程度だろう。 白い嵐が収まった後に残る数本の氷柱。 俺は無造作に右手を氷柱に向かって振るった。 ガラスの割れるような音と共に崩れ去る氷柱だが、その中に先ほどまでの若者達はいない。 その代わりと言うか、俺の振るった右手の中には一振りの剣が納まっていた。 柄は黒、刃はどす黒い紅をした西洋剣。 直刃ではなく、緩やかに湾曲した刀身からは禍々しい気配が感じ取れる。 なんぞこれ? こんな剣、俺は知らない。まぁ、普通の生活を送る一般人ならば剣など手にする事もないままに一生を終えるだろう。 そう。一般人の俺がこんな剣を知っているはずがないのだ。 それなのに…… 「ぐ……がぁぁぁぁぁ!」 突如として俺の頭に情報が流れ込む。剣の名前、扱い方、知識、様々な情報が有無を言わさず流れ込んでくる。 頭が割れるように痛い。身体が炎に包まれたように熱い。 それなのに意識は途切れることなく痛みを感受し続ける。 膝が折れ崩れ落ちるも、倒れた事により地面と接した部分から更なる痛みが襲う。 気が狂いそうだ。 それでも意識を失う事は赦されず無限とも思える苦痛の時間の中で、俺は心の中で何かが壊れる音を聞いた。 大切な何か。 それが何かは分からない。 もう壊れてしまって心の中に存在しない物(感情)だから。
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