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さっきの発言から推測するに、自我が残っている可能性はある。
ただそれもユーヤの自我をベースにレーヴァティンが演じているだけかもしれない。
私にはそれを確かめる方法はない。
だから今は……
「ユーヤを止めて自我を完全に復活させる」
立ち上がりダークユーヤから距離を取ると、ケーリュケイオンを振り上げ詠唱を始める。
「ほう、貴様も魔術を遣うか……見せてみるがいい」
不敵な笑みを浮かべて此方を見るダークユーヤ。
私が使うのは神経系に作用して相手の動きを封じるスキル。
伝達の杖と呼ばれるケーリュケイオンを使い、脳から送られる電気信号の伝達を阻害して行動不能に陥れる。
余裕の表情で私を見据えるユーヤだが、これが発動すれば私の勝ちだ。
「graceful Moment!」
“貴方に休息を”
力ある言葉に反応して輝く杖。
輝きは離れたダークユーヤに移り、杖の輝きが減るに従いダークユーヤの輝きが増していく。
「おおっ、これがお前の魔術か。確かに身体から力が抜けていく……素晴らしい」
片膝を地面に落とし呟くダークユーヤ。彼はこれで終わりだ。
何の余裕かは知らないが、アーティファクトのスキルをまともに受けたのだ。たとえレーヴァティンが支配しているとは云え抗えるものではない。
「だがしかし!」
そんな私の思惑はダークユーヤの一言と共に泡沫のように儚く消え去った。
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