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フィアはスタスタと喫茶店を通り過ぎ、横にある片開きの扉が付いた入り口から中へと入ってゆく。
素直に後に続いた俺は扉の中、壁に掛けられたら銀色のプレートを見る。
入居しているテナントが何階にあるか書いてあるアレだ。
一階 喫茶『アーデルハイド』
クララが立った!?
二階 ニコニコ金融『萬田』
ダークな臭いしかしてこねぇ。
三階 麻雀『赤城』
劇画調の人が打ってそうだ。
四階 毛里探偵事務所
まさかのバーロー?
五階 (有)Vortex
渦?まあ、他のテナントから考えればここが妥当だろう。隠れ蓑の会社ってトコか。
「早くしなさい」
階段の折れ曲がる踊場からフィアに急かされる。
このビルにはエレベーターって文明の利器はないのか?五階まで階段とかダルすぐる。
早々と嫌気が差しつつフィアの後に続けば、早々にドアノブにかけられるフィアの右手。
ちょっ、そこは―――
「Hello。新しい契約者連れてきたわよ」
堂々とニコニコ金融に入って行きやがった。
つか、なんで闇金的な名前なんだよ。明らかにこの五階の中なら(有)Vortexだと思うだろうが常考。
フィアに続いて扉を潜れば、中には普通のオフィスが広がっていた。
パーテーションで区切られて奥は見えないが、見える範囲は普通のオフィス。想像していた怖い系のゴツいオジサンが居るわけでもなく、受付カウンターには女性が座り笑顔を振り撒いている。
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