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「行きますよ!」
男の声の次の瞬間、俺を襲う急激なG。座っていたのに身体は後部ハッチに向かい倒れ込む。
ゼロヨンでも始めたか?って程の加速は止まることなく、そのままのスピードで山手通りに侵入していく。
確か赤羽ってあそこ右折だよな……?
「掴まってて下さい!」
は?
まさかこのスピードから曲がらないよな?
そんな疑問は隣で両手足で身体を固定する弥栄さんの姿を前に現実となった。
サイレンの音に負けない程に鳴り響くタイヤのスキール音。俺の身体は慣性の法則によりドア側へと放り出される。
「ふぬぁぁぁぁぁぁ!」
とっさに足をドア側の壁に着き右手で長椅子の背もたれ、左手で長方形のボックスの角を掴み、かろうじて体勢を保持した。
「流石です」
男は平然とした口調でバックミラー越しに俺を見る。
いや、危ないからちゃんと前見て運転して下さい。さっきから速度警告のキンコンが鳴り止んでませんし。
お前は豆腐屋の息子か。
「申し遅れました。自分はマイス池袋支部緊急輸送班の十村と言います。貴方は新しい契約者の方ですか?」
普通に話すなし。さっきから横Gが凄いんだよ。ぶっちゃけ気持ち悪くなってきたし。
「一ノ瀬さんは今日支部に来たばかりなんですよ」
おおぅ。この状況で普通に答えられるとか弥栄さんたら意外とタフなのね。
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