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視界と言うより世界が変わったと言った方が正確か?様々な色で埋め尽くされた俺の知る何時もの世界が、弥栄さんの後ろからどんどんセピア色に浸食されてゆく。
振り向けば既にそこには俺の知る世界は無かった。
セピア色に覆われた、全てが濃淡で表されるノスタルジックな感じのする世界。これが結界ってやつなのか。
写真や風景画で見る分にはノスタルジックな気分に浸れて良いのかもしれないが、そんな世界に放り込まれた俺としてはそんな感傷に浸る余裕などありはしない。
しかも、結界が張られた事により電柱の陰で身動きが取れずにいた異形達が動き出す。
何ですかアレは?
遠目に見てたせいで気付かなかったが、バラけると一体一体の見た感じは人間っぽい。
二本の足で立ち、二本の腕がダラリと下がる。ただ、人間と明らかに違うのはその色と頭の形だ。
色は焦げ茶色…と言うか濡れた土と同じ色。頭の形は縦に長い長方形をしている。
長方形の頭の中心辺りに二つの赤い目が光り、長方形の下部には左右に裂けた口が開き、中から涎なのか泥なのか分からない焦げ茶の液体を滴らせていた。
ついでに身体からも歩く度にベチョベチョと音を立てる同色の粘液っぽいモノを流している。
それが数体……
うん、正直帰りたい。
俺にこの奇っ怪なナマモノ達と戦えと?遠慮どころか全力で拒否させて頂きたい。
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