122人が本棚に入れています
本棚に追加
いや待て、諦めるのはまだ早い。
相手はまだ俺が何処に居るのか分かってないんだから、見つかる前に家に帰れば良いじゃないか。
俺が住んでるマンションのセキュリティーは万全だからな。
そうと決まれば、さっさと黒い塊が何かを確認して逃げよう。
俺は黒い塊に小走りで近付き、ソレを見た途端に息を飲んだ。
それは予想通り生き物では有ったが――二又の尻尾を持つ猫だった。
だが、俺が息を飲んだ理由は二又の尻尾では無く、その猫がとても弱っていたからだ。
呼吸は浅く、体は微かに震えていた。
そっと抱き上げてみると驚くほどに軽く、外傷も無い事から食事が出来なくて衰弱したのだと推測出来る。
俺は一瞬動揺したが、急げばまだ間に合うかも知れないと思い、猫が落ちない様にしっかりと抱きしめ公園を出た。
そして、動物病院に連れて行こうとして思い出す。
自分は今、道に迷っていて周辺の地理など全く分からないという事を。
そして、先程よりハッキリと聞こえるエンジン音で思い出す。
自分は今、バイクに乗った不良に追われるという理不尽な試練に見舞われている事を。
結論。
――とりあえず、逃げよう。
最初のコメントを投稿しよう!