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SIDE:猫
頭が痛む。
体がフラつく。
それが今のワイの状態や。
100年以上生きとる猫又のこのワイが、霊脈にある縄張りから少し離れただけでこの様とは、全く情けない話や。
それもこれも全部、"アイツ"の所為やで!
ワイは心の中で悪態を吐いたけど、不意に視界がぼやけて、フラつきながらも進めてた足が縺れて倒れてしもうた。
起き上がろうとするけど、体に力が入らんと無理やった。
くそっ……!
ワイはそこで意識を失った。
―――――――――――
次にワイの意識が浮上してきたんは、近くに人間の気配を感じた時やった。
「迷ったのか……?」
ワイはその人間に背を向けててソイツの姿は分からんが、そう呟いた声は若い男のもんやった。
悲しみを秘めた様な声音のその呟きは、微かに視線を感じる事からワイに向けられとるんやろう。
コイツ、ワイが迷い猫やとでも思っとるんか?
人間に哀れまれるとは、ワイも終わりやな……
すると、自嘲気味な雰囲気を出したワイの事をどう思ったのか、人間が苛立った空気を醸し出した。
けど、ソイツはすぐに苛立った空気を仕舞って、ため息を吐いた。
その反応に何でか寒気がして、ワイの体はブルリと震えた。
向けられてた視線が、強うなった気がした。
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