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少女は片手に男の首をしめたまま、鞄をあけた。
白いベールが中に入っていた。
少女の手は揺るみ、目には涙が溢れていた。
そっと首から手が緩み離れていく、僕はその流れを見ると、安置室の扉がカチャリと開いたのをみて、中に入った。
『あぁ、思い出しました。わたしくしは貴方を一目見たかった、幸せになってくださいと、死ぬ瞬間に願ったのです』
男は、ベールを頭にかぶせてあげると、冷たく真っ白な少女を抱き締めた。
『わたくしは神のもとへはいけませんね、あなたに酷い事をしてしまいました・・・・。ただ、最後にあなたに会えたこと神様に心から感謝します』
男が抱き締めていた遺体は直ぐに崩れていき、残ったのは赤く鮮やかな着物だけだった。
魂も肉体ももっていかれたが、彼女が満足したのであれば僕はそれでいいと思った。
僕は確かに心を読むことはできるけど、死んだ遺体にどうしてあげるかなんてできない。
今、生きている人が大切で死んだ人間に縛られていては前には進めない、だから、少女には悪いけど見守るしかなかった。
男が殺されかけるとは想定外だったので申し訳ないとは思っている。
最後に心から神を信じていたので、途中で神の手にさしのばされていることを僕は祈っただけだった。
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