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【捜索】
『彼の人に・・・・会いたい』
その言葉を最後に彼女の語りは終わった。
僕はゆっくりと彼女から離れてグレンをみた。グレンは直ぐに万年筆と用紙を僕に渡してくれた、そして、先ほど彼女が語ってわかった事を書き出した。
僕は触れた人の思いを読み取る力がある。
ただし、死人のみ。
生きている人間は思いが強すぎるし、私情がまざっていて読み取れないからだ。人間は複雑すぎる。
グレンはいつも、自分で解決するのだが、たまに怪奇事件があると僕に依頼する。
ズルは嫌いだが、早くしないと遺体が可哀想だからと言ってよく電話してくるのだ。
「どうだ?」グレンは興味深く僕の答えをまった。
「キーワードは書いてある通りだよ」
グレンはメモを受け取った。
[日本人、難破船、9月1日出航、荒城静音、カイル・レイナート貿易商人。]
「よし、日本に連絡して身柄の確認をしつつ、恋人もさがさないとなぁ、あわせてやれば、彼女も神の下にいけるだろうし」
グレンは拳をにぎり威勢よく言った。
僕はうつむき、気乗りしてない雰囲気で答えた。
「・・・・グレン、僕は遺体を祖国に送りだしたほうがいいとおもうけどね・・・」
グレンは握った拳を僕の前に突き出し言った。
「なんでだ?」
申し訳なさげに、答えた。
「今さら、死んだ恋人の遺体を見るなんて、相手が可哀相だ。」
「~・・・そうか?
オレはつらくとも最後に強い気持ちを聞きたいがな、彼女が可哀相だ。」
グレンは強いな・・・・そう思い苦笑した。
苦笑している僕を横目にグレンは付け足す。
「それに、日本に連絡取れない場合は身元確認してほしいし。見つけてて損はないだろう?」
「確かに・・・・そうかもしれないね、見つかるといいけど」
「ありがとうな、結果はまた連絡するわ✋」
そう言ってグレンは安置場所からでていった。
僕と遺体の二人だけになり出ていこうとした時だった。
遺体が微かに動いた気がした。
もう一度触れてみた。
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