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「全然説得力ねぇぜ」
◆
階層を一つ落ちた。
それが3~4m程度の高さだったら良かったのに、ここアンダー・フォニクスでは一つの階層に30~40mの高さがある。
身体中に激痛は走っているが、骨折していなかったのがまだ救いだろうか。
「痛ッ……」
腰を押さえて立ち上がる。
これだけの高さから危険な体制で落ちたのに、それで何のケガもなかったのは、「やっぱり俺がフツウじゃないからだろうな……」
落ちた時の衝撃で、口の中に血が溜まっていた。
ラグナがそれを自身の手で受ける。
ベットリと張り付く粘性の液体。
直ぐ側に偶然落ちていた布切れに擦り付けた。
「ああ……そっか。
落とされたんだったな。
柚月達と……はぐれちまった」
その時、砂利を踏む音がラグナの耳に響いた。
◆
「やぁ、久し振りだね加水君。
脱獄の小説を読むなら、登場人物と同じく監獄の中の方が感情移入出来るかとも思ったが、駄目だね。
ここは空気が悪い。
囚人が入る場所ではなく、自分達に邪魔な人間を入れておく為だけの場所にしか思えない。
読書には合わないな、危ない若者には会ったがね」
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