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私にしか感じ取れない彼の気配。
そう、彼だ彼が確実にここにいる。
彼と幾度となく語り合った言葉は一字一句たりとも、私は忘れていない。
これ程までに心が震えたのは十八年振りだよ。
――さぁ加水君、帰ろうか」
彼女がキョトンとした顔を見せる。
「そんなに大切な御友人なのに、御会いにならないのですか?」
「彼だからね。
彼と語らう時間は同量の金であろうとも賄えない。
だから私は彼との久々の会合を待つ事にするのだ。
もし彼が本当に彼ならば、その縁でいつか会う事になるだろう。
もし会わなければ、私の心が渇望しその結果、副産物として生まれた――俗に言う勘違いというものだと言う解答に結び付くだろう。
解ったかね加水君、では帰る準備を――……」
『既に』」
いつの間にか高速戦闘機の中に移動しており、そこからフリーに言葉を投げる彼女。
「流石だよ、加水君。
ふむ、毎度の事ながら目配せの効いた先回りの上手さ。
しかし私の言葉聞いていたかい?
加水君、乗り物の準備をしてくれた事に関しては大変嬉しいのだが、絶対に私の話聞いていなかっただろ」
「何の事でしょうか。
さぁさ、早く乗って下さい」
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