無機質×?=愛めいた味

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仕事で失敗、たくさんの人に頭をさげた遅めのお昼。 お弁当のミックスベジタベルを見ていると なんだか切ない気分になる。 グリンピースはまぁいいのだけど 真四角に切られたニンジンの赤はなんだか無機質で じっと見つめてため息をついた。 『仕事で帰り遅れるから』 電話の向こうであぁ、とあの子が答える。 無口であまり声に感情はないのだけれど、なんだかそこに落胆を見た気がしてうれしくなった。 仕事を終わらせる手が自然と早くなる。 帰宅ラッシュの電車、もみくちゃにされ、ヘトヘトで帰宅するとあの子が迎えてくれた。 『…こんなのしか、作れないけど』 明らかに解凍しただけのミックスベジタベルに、卵をかき混ぜて焼いたのだろう不格好な卵焼き。 照れてそっぽを向いた横顔 なんだかそれに、毒を抜かれた気がした。 『お疲れさん、母さん。』 このミックスベジタベルの味は しばらく忘れられそうにない
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