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闇を少女が疾走する。
もげてしまわないだろうか?
そう思うほど手足を大きく揺さぶっていた。
切迫した顔に浮かぶ、苦悶の表情。蒼い瞳は前だけを見据えて。
風を纏い。
風を切り裂き。
ただ、がむしゃらに前へと走り続けている。
まさに――――疾走。
辺りには据えた匂いが混じり、鼻の粘膜を不快に刺激し続けている。
その源は秩序などなく我が物顔で散乱している生ゴミの群れ。
それらの全てが既に形を成しておらず、あるものは腐り。そして風化し、塵と成り果てて。
その残滓が大気を澱ませ、空気に漂っている……。
見渡す四方には倒壊寸前のビルや崩れかけのマンションが大仰に立ち並んでいた。
圧倒的な存在感。
だが、相反する空虚な雰囲気を醸し出して走り行く少女を取り囲むように。
目に映る灰色の欠片や黒い粉末はかつて温度のある建物だった名残。
細かく散った残骸もそう。
風が吹き地が揺れるたびにサラサラと地面へ零れ落ちている。
さしずめ、見捨てられた街といったところだろう。
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