序章

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   道に横たわる大きな石を飛び越え空き缶を蹴飛ばし――少女はなおも足を止めない。  折れた電柱が崩れ、二つに重なり彼女の往く道を阻んでいる。  その周りは夢の島かと見紛うばかり。常軌を逸した巨大な不燃ゴミの塊。  テレビや冷蔵庫など家電の成れの果ては言うまでもなく、壊れた車や崩れた瓦礫が捨て置かれ。既に元の形さえ解らぬ物達が所狭しと幅を効かせている。  積み上がるそれらの中には粗大ゴミだけではなく、大小様々なボルトや歯車。錆びたネジのような機械の一部。  混沌としたその中で、全く腐蝕をされず形を留めている金属が僅かに異彩を放ち、単なるゴミの山では無いようにも見えた。  その時、  ガキッっと鳴った音が辺りに鋭く響いていく。  どうやら、何かにつまづいたようだ。 「……いたっ」  小さな悲鳴をあげて地面に転がる少女。暗がりの中銀色の髪が煌めく。  ふわりと風に揺れて散々と乱れていった。
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