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額の汗を拭い、森野と名乗った男はその問いに答える。
「い、いえ、現在捜索中でして今本部に――――」
その瞬間、受話器の向こう側にガラスの砕ける派手な音! それに伴い弾けるような罵声が響く。
『何をしている! この役立たずが! ヤツが一般の街に逃げたら面倒だろうがあぁっ!』
鼓膜を越え、脳内に直接響く重低音。森野は顔面を蒼白にした。
「の、能力を使用されました。只今、サーチャーを本部に、し、申請中であります」
受話器から響くその声は留まる事を知らず。
『言い訳はいいぃィィィッッ! 本日中に、あの女を捕まえなければ、本部に戻らない覚悟でやらんかあぁっ!』
受話器に敬礼をするように姿勢を正す森野。その背筋は棒を刺したようにピンと張り詰めていた。
「ハッ! だ、大至急、捜し出します!」
その言葉だけをなんとか捻り出す。
……だが、通話はすでに途切れていた。
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