第19章 世界を傾ける力

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  「3棟ある中で商業用の、A塔と呼ばれる建物でその統括。責任者だったの」  レイチェルはまるで他人事のようにそう言った。 「……責任者だった?」  さっきルークと交わしていた会話の流れから第3都市絡みの人間だとは思ったが……。  それに、過去形で言った言い方も気になって思わず鸚鵡返しの返答になる。  もう目と鼻の先まで来ていたレイチェルは足を止めて、その言葉に淡々と言葉を返してきた。 「そう。正確にはさっきまでね。そして今は本来の目的に立ち返った」 「本来の目的?」 「ワタシはジェネシスの守護者。方舟を守る者。時間操作及び傾世の力。アナタ達を回収するわ」  こいつは方舟……。  ずっと、この都市に潜り込んでいたのか……? 「……なんで月代を殺した? 何で今なんだ? 十年。その間にチャンスは幾らでもあったろう?」 「今代のジェネシスは全てをお見通しだったの。まさか、数千年に渡る傾世の力の研究。本物の成就をコピーによって成そうとは歴代のジェネシスは誰も考えなかったと思うわ」  質問に対しての答えにはなっていない……だが、言っている事に妙な説得力がある。 「どういう意味だ?」
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