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「ワタシ達は基本的に個人や組織には介入しない。歴史の大筋で未来を導ければそれで構わないからよ。だからこそ、十年前。この都市への潜入は記憶や記録の改竄……手間暇を掛け本来なら考えられないものだったわ」
一方的に語られる内容に会話が成立しない。
「…………、」
「傾世の力。数百年に一度現れるという奇跡はワタシ達の研究命題のひとつ。だけど、未だに全貌の確認と検証、方法論が確立されておらずメカニズムが不明なままの危険な能力」
何を言っているか分からないが俄かには信じられないスケールの話だというのだけは分かった。
数百年に一度……そして命題という事は、何度もそれを確認しているという事。
そんな昔から現れるたびにカフカのもつ異能と同様のものを研究している……。
絶句した俺に向けて、再び肩先にかかる金色の長い髪を左手で払いながらレイチェルが語りだす。
「約、十年前にオリジナルの発現を確認。そして回収した」
月代の倒れた方角を見る。
寄り添うようにカフカにそっくりな黒いドレスの少女が身体を重ねている。
「オリジナル……そこの女性の事か……」
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