第19章 世界を傾ける力

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  「……っ!」  ……ちきしょう、動け!  俺はまだやれる!  一切の力が抜けて動かぬ身体を叱咤する。 「――おおぉぉっ!」  だが、どれだけ足掻こうと現実には動かない。  立とうとする膝はガクガクと笑って吐く息と吸う息が激しくぶつかっている。  誰が見ても絶対絶命……。  何か……。何かないのか!  諦めずに出来る事を考えるも何も浮かばない……。  もう、だめ……なのか?  レイチェルが右手をひざまずいた俺に向けて照準を定めた時だった。 「「――う、あああ゛ああ゛あ゛あ゛あぁぁァァーーっッッ!」」  凄まじい絶叫が甲高い音を立てて空気を楽々と引き裂いていく。 「……なに?」  茜色の室内灯を受けて立体的に輝く銀色の右腕。その先端を俺に向けたまま片眉を上げ声のした方角へと顔を向けたレイチェル。  動けなくなった身体で、それでも首を動かして俺もそちら側に目を向ける。  この場所に今三人しかいない以上、当たり前の事。  そこには蒼い瞳を血走らせて両手の先を強く握り締めながら。  身体中を震わせたカフカが突っ立っていた。
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