第19章 世界を傾ける力

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   2  睨み合うレイチェルとカフカ。いや、その対峙は睨み合うとは呼べないかもしれない。  カフカは全身を震わせ涙目になっているし、レイチェルはその様子を訝しげに眺めているだけなのだから。  顔だけを横に向けたままレイチェルがカフカに問い掛ける。 「なに? 《Metamorphose》?」 「――ゆる゛さない」 「は……? 人形風情が。なにを言い出したわけ?」 「あなたは……私の大事な人を殺した……そのうえまた、大事な人を奪おうとしている……」  どういう意味だ?  動かせない身体で頭だけを働かせて考える俺に、レイチェルの呟きが聞こえた。 「そう。そういう事……。ここにきてオリジナルの記憶と現在の記憶が混同したのね。まぁ、前例のない事だから何が起きても不思議じゃないんだけど」  オリジナルの記憶?  まさか、世羅紗耶香の記憶?  考える俺を一瞥すると、身動きがほとんど出来ない事に安心をしたのか、すぐに俺から照準を外してカフカへと向き合う。 「――先にアナタからにしよう。あまり抵抗されると面倒だし、ね」  そう言って、照準をカフカへと定めていく。  その瞬間、カフカが纏う空気があからさまに変わった。
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