第19章 世界を傾ける力

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  「出力が足りない……か」  俺のそばで足を踏ん張る金髪が小さくぼやく。  その言葉通り、ぶつかった光の行方は僅かにレイチェルの側へと押し込まれ始めている。 「ホントに参っちゃうわ」  再び呟いて。  今度は突き出した煌めく右腕とは対照的に闇色の左手を自分の胸の前で握り出す。  その瞬間、室内を駆ける二色の光が最大限に膨れて均衡が崩れた。オレンジ色の光は白に全て飲み込まれてゆく。  瞬く間に一色の輝きへと塗り替えた白光の奔流が正確にレイチェルのみを襲う。  ……とてつもない。  目の前で展開される滅茶苦茶な光景に現実感がまるで湧かない。  白煙に包まれたまま微動だにしないレイチェルにさっき巨大なマリオネットを襲った惨状を思い出す。  アレをまともに喰らったらただじゃすまないはず。  みるみる煙幕が空中に混ざり、視界の内側がクリアになっていって。  果たして。  俺が想像したような出来事は一切起こっておらず。  上げた左腕をゆっくりと動かしている長い金髪の姿があるだけだった。 「凄いは凄いけど。予想の範疇ってところね……」
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