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もう二人の距離は触れ合う寸前。
その時、カフカが前方へと左手を向け風を起こす。
吹き荒れる爆風は矛と化して眼前の敵に炸裂するはずだった。
だが、それに対しても向けた左の黒い手袋で消滅させる。
そのまま、交差する二人。風の起点となったカフカの突き出た左腕が宙を舞った。
「――Gぁ87ラぁ!”」
「カフカ!」
思わず叫びが喉から飛び出た。痛みを忘れ立ち上がった。
宙を舞った左腕が何度も空中で回転しながら俺の目の前でポトリと落ちる。
自然と視線がそれに吸い寄せられた。
血塗れの左腕……。
黄土色をした床に飛沫が飛んで点々と血痕を刻んでいく。
カフカ……。
覚悟を決めて。そこから視線を戦いの場へと戻す。
瞳に映った光景は呻き声を上げてうずくまるカフカの姿。
それに対して勢い余って行き過ぎたらしいレイチェルが踵を返しながら口を開く直前だった。
「ね? 無駄でしょう? 素直に投降しなさい。ワタシにはアナタの対処方法がある。意地を張っても痛くて苦しい思いをするだけ。……とはいえ、時間を置くか転生し直せば腕くらい生えてくるんでしょうが」
そのまま唇を舐めて更に言葉が続いていく。
「死んだら終わりよ?」と。
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