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こちらに向けた切っ先が白煙を上げている。ボンヤリと見える。
意識が遠くなっていく……。
――――いや! まだだ!
頭を振って意識を留める。
這ってでも……前に。
このままカフカを。一人でなど戦わせはしない!
滲む視界で朧気な景色の中、両手で身体を引きずる。
「……しつこいなあ」
「がぁ!」
いつの間にか歩いて来たレイチェルが俺の体を踏みつけた。
「アナタは何がしたいの? どうやってもワタシに適わないのは分かるでしょう?」
背中に体重がかかる。口から鮮血が飛び出して黄土色の床を濡らした。
頭上から聞こえる声が鼓膜で歪みながら意味を為していく。
「最悪さ、アナタは殺してもいいんだよね……」
「――が!」
踏まれた足が背中から外れて、今度は顔面へと炸裂した。
もうだめだ……これ以上は本当に死ぬ。
なんだろうこの気持ちは。
人は追い詰められて究極の絶望に達すると、なにもかもどうでもよくなるらしい……。
何をしても適わない。
どうやっても希望が見い出せない。
だけど、それでも――
――カフカは俺が守ると、決めたんだっ!
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