第19章 世界を傾ける力

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   こちらに向けた切っ先が白煙を上げている。ボンヤリと見える。  意識が遠くなっていく……。 ――――いや! まだだ!  頭を振って意識を留める。  這ってでも……前に。  このままカフカを。一人でなど戦わせはしない!  滲む視界で朧気な景色の中、両手で身体を引きずる。 「……しつこいなあ」 「がぁ!」  いつの間にか歩いて来たレイチェルが俺の体を踏みつけた。 「アナタは何がしたいの? どうやってもワタシに適わないのは分かるでしょう?」  背中に体重がかかる。口から鮮血が飛び出して黄土色の床を濡らした。  頭上から聞こえる声が鼓膜で歪みながら意味を為していく。 「最悪さ、アナタは殺してもいいんだよね……」 「――が!」  踏まれた足が背中から外れて、今度は顔面へと炸裂した。  もうだめだ……これ以上は本当に死ぬ。  なんだろうこの気持ちは。  人は追い詰められて究極の絶望に達すると、なにもかもどうでもよくなるらしい……。  何をしても適わない。  どうやっても希望が見い出せない。  だけど、それでも――  ――カフカは俺が守ると、決めたんだっ!
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