第19章 世界を傾ける力

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   その場所に光。  ひとつ所から舞い踊るように。キラキラと降り注ぐ。世界を優しく包んでいく。  それは限りなく温かく。際限なくやわらかく。慈愛に満ち満ちた煌めき。  言葉ではけして現せないが、あえて言うならば原初の光。  記憶を刺激して。  心を揺さぶり。  魂を安らかにしていく。  一瞬、レイチェルの冷徹な横顔でさえ緩んだような気がした。  光が突如――     ――――荒々しくなる。  猛るように。  吠えるように。  渦巻くように。  なにものにも縛られず。誰にも止められず。縦横無尽に天地を駆けていく。  どれだけ暴れたのかも解らぬその時間は誰もが何も出来ず、ただ観るだけの時間――――  やがて、発された起点へと全ての光は集まり、戻りゆく。  呆然と見つめたままだったレイチェルがハッとして。 「――しまった!」  と。
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