第19章 世界を傾ける力

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   それを一瞥して、微笑んだカフカが俺に向け唇を動かしていく。 「響也、よく聞いて。これから先に起こる事は全て私の意志。だから、悲しまないで」 「……か、カフカ! どういう意味なんだ」  振り絞った俺の問い掛けに、もう一度優しい笑顔を作ったカフカが口を開いていく。 「もうすぐ意識がなくなる。本当に時間がないから……行くね。今までありがとう――」  一方的にそう言ったカフカはレイチェルに向けて優雅に空を駆けた。  レイチェルが即座に動く。  金色のツルギが右手に宿る。  それを迫り来るカフカに向けて振り下ろす。  だが、炸裂する前に。疾風の速さでカフカを襲ったツルギは無へと還った。 「チッ! だけどまだあるわ!」  今度は目前まで来たカフカへと黒い左手を押し付ける。  僅かな時間だけ空気が揺れる。視認出来る波紋が凄まじい速さで空間へと広がった。
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