最終章 そして未来へ

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   夢を見ていた。  なぜかハッキリ夢だとわかる。  走馬灯のように過去から今へ。映像が流れ続ける。  生まれた瞬間、両親が喜んでいる。当然覚えてなどいない。  幼稚園。スプーンがサビてびっくりした初めての忌まわしき能力の発現……。  小学生。暴れる俺に心配する両親。やがて高坂博士と和輝に出会う。師匠と琴音に出会う。  駆け足で行き過ぎる過去の出来事。夢って不思議だ……。  中学生。琴音と一緒にやんちゃをして和輝に説教を喰らう日常。  そうそう。和輝は小学生の頃から説教臭かった。  高校の入学式。  空手部へ入部した事。  やる気のない毎日。  繰り返される退屈な日々。  誤魔化す心。悟ったフリをしていたんだっけ……。  喫茶店四季の発見。  マスターとの出会い。  これが俺にはヒットだった。  そして――……  ああ、いろんな事があったんだな……。  やがて、そのフィルムは終わりを告げて見た事もない景色が突如湧き出た。  これは……?  灰色の厳めしい建物。すぐに映像は建物の部屋へと移る。  小さな個室に若い男女。  男性はメガネのフレームをつまんで軽く持ち上げると頬を弛ませて笑った。  心底から楽しそうに。  それを見た女性が顔中に幸せを浮かべ優しく微笑む。  銀色の髪を揺らしながら。  女性が突然。見えるはずもない俺に向けて言った。 「――あなたなら大丈夫」  ああ、そうか。  この二人は――……
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