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「……そう。あんたがあんまり沈んでいると張り合いないからさ」
そこで俺に向けた瞳を逸らして窓の外へと視線を向けた琴音が言葉を続けていく。
「何があったのか知らないけど元気出しなさいよ」
「心配してくれてるのか?」
「ば、バカじゃないのっ!? なんであんたの心配なんか! か、勘違いしないでよねっ! 暗い奴がいるとご飯が不味くなるって言ってんのよっ!」
慌てた様子でこちらに視線を戻した琴音が、白い肌を朱に染めてそう言った。
彼女の様子になぜか自然と笑いが零れる。
ああ、日常だ……。
「ふふ、ありがとな。ちょっとだけ時間をくれ。もうちょいで完全に復活するからさ」
「べ、べつに、ど、どっちでもいいし!」
「じゃあな、今日はこのまま帰るわ」
一言彼女にサヨナラを告げると俺は後ろ向きに手を振って歩き出した。
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