🏫ｱﾀﾗｸｼｱ(平静な心)は 消えた?

[1]動き出す歯車

―――春の陽気が麗らかに漂う３月

「さ 寒っ」

とはいかず――

毎年３月というのは意外に寒いものだ。

「あﾞーっ 何故このような日に限って体育なのでしょうか??」

半袖短パンのジャージ姿で両腕を擦り肩を震わせるのは、

本田 菊。黒髪黒眼とは対照的な 雪白い肌が愛らしい美少年だ。

その隣にいるｱﾙﾌﾚｯﾄﾞは 独りでなんだか嬉しそうだ。

「菊～！
今日の体育は合同授業だなんて、ﾍﾞﾘｰﾗｯｷｰなんだぞ☆」

今日の体育は
８組(菊のクラス)と
６組(ｱﾙﾌﾚｯﾄﾞのクラス)
との 合同授業。

菊に想いを寄せるｱﾙﾌﾚｯﾄﾞにとって またとないﾊｯﾋﾟｰｻﾌﾟﾗｲｽﾞだったのだが…当の菊は

「嗚呼‥‥ﾙｰﾄ先生(体育教師)がお腹を壊せば良いのに…」

などと言う始末だ。

今ﾙｰﾄ先生が腹痛になれば、折角の合同授業は中止になってしまうのにも関わらず

こんな事を言い出すってことは、菊に全く脈が無いと解る。

こうして、彼の天然に振り回される男性が続出したことから、

裏サイトで『楽中･影の支配者』とまで言われている。

勿論 菊自身は知るよしも無い。

「おいっ！本田、ｺｯﾁこいっ」

「！？」

“この声はｯ！？”

今しがた声に出して『腹壊し』要望してしまった相手
ﾙｰﾄ先生 張本人だ！！？

ﾙｰﾄｳﾞｨｯﾋ先生は、ｻﾃﾞｨｸ先生同様 生活指導担当教員で、

彼の陰口を叩いたりなんかしたら それこそ体罰モノだという専らの噂である。

菊は
『情報源が、保険医と生徒会員なので さぞ確かな噂に違いない。』
と認識してたので 頭の中が真っ白になった。

「本田ぁ！ さっさとこいっ!」

「！？」

ﾙｰﾄ先生は酷くご立腹な様子。
多分 菊が(びびって)なかなかﾙｰﾄ先生の処に行かなかったのが原因だろう。

そのことに気付いた菊は 慌てて彼の元へひた走るのだった。

「す 済みません‥‥」

問答無用で まず謝る。
菊の奇癖だ。

「何を謝っているんだ？
俺は体育係の仕事で呼んだだけなんだが‥‥」

どうやら考えすぎだったようだ。

よって説教も体罰も免除だ。

ソレを聞いて ホッと胸を撫で下ろす。
が 仕事とは一体‥‥