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黒髪少女は嘆息をつきながら両腕をくみ上げる。
「それで、えっと……お名前は?」
「北条よ。北条霞」
「そうか。で、北条。今の俺は被害者的位置にいたと思うんだが」
「あなたがそんな姿じゃなかったら、こんなことにはならなかったわよ」
否定できません。
いやしかし、あの遅刻は俺のせいだけではなくて、むしろここの理事長にあるというか……。
なんか言い訳臭いな。
「でも霞、面白かったよね。あ、私は水島麗奈。よろしくね♪」
「ち、ちがうわよ!何であんなのなんか見て面白がるのよ!」
「北条、顔真っ赤だぞ」
あとあんなのとは何だ。
まるで汚物のような言い方だろうが。
「~~~~っ!!」
北条はさらに顔を赤くしてしまう。
何をそんなに恥ずかしがるようなことがあるのか分からないが。
少なくとも、俺の今のこの姿より恥ずかしいものはないと思う。
「ハハハ、一年間面白くやって行けそうだぜ」
何で人事みたいなんだ。
お前のせいでこんな風になってんだぞ。
そんな感じで喋っていると、
「お~し、お前ら。入学式始めるから体育館に移動してくれ。あと鷹見、ほら。菫から
取り戻してきてやったぞ」
渡辺さんから渡されたのは待ち焦がれた俺の制服。
「さすがにその姿で入学式はかわいそう――というか、うちの入学式はいろんなお偉いさんがたがたくさん来るんだ。上半身裸の新入生だなんて恥でしかねぇからな」
「ああ……あんな自己紹介のわりにちゃんともの考えてるんですね」
「余計なお世話だよ。その制服返してもらうぞ」
「すみませんでした、本当にすみませんでした」
恥とかまったく気にせず土下座した。
いや、入学式上半身裸よりはこっちの方がまだましだろ?
ということで制服を着なおしたところで、俺たち入学式の会場へと向かった。
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