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「そのご婦人とは顔見知りでして?」 「えぇ。数か月前から姿をお見かけするようになりました。私がちょうど庭仕事をする時間によく家の前を通るんです。いつもにこやかで本当に幸せそうで……」  しかし、苦虫を噛み潰したように刑事は続けた。 「しかし凶器らしきものが存在して、貴女は脇腹に軽傷を負ってらっしゃる。まさかご自分でなさったとはおっしゃるまい」  詩織は言い淀み、 「何かの間違い、だと思うんです。大した傷じゃありませんし。それよりあの方は無事に出産されたのでしょうか」  老刑事の眼光が鋭く詩織に向けられた。 「例えば、の話です。彼女がご主人の知人だという可能性は考えられないでしょうか。ご主人ならあるいは、お腹の子に心当たりがあるかもしれませんぞ」
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