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 彼の姿を窓から見送りながら朝食の後片付けを始める。  またこんなに残しちゃった。心配だわ。今度人間ドックに行ってもらわなきゃね。これからは生まれてくる子供のためにも、元気に働いてもらわなきゃならないもの。  夢に描いた通りの閑静な住宅街。ここで新たな生活を送ろうと、私は2LDKのアパートを借りた。  折り目正しい彼のパジャマを改めて引き出しにしまうと、部屋中にくまなく掃除機をかけ、家具の一つ一つを磨き上げた……これからは彼のためだけに生きていける。テーブルの上で縫いかけのスタイが私を待っている。  なんて幸せな毎日。  けれども、それはなんて頼りない充足感。  私の幸福は誰かの犠牲の上に成り立っている、そんな罪悪感が形を変えて私に奇妙な悪夢を見せているのかもしれなかった。
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