身籠る私と紅い月

Ⅲ

　今だ。
　私は素早く凶器を抜き取ると、女の脇腹目がけて走り寄った。騒がれては困る、一気に片を付けなくては。

　全身が脈打ち、心臓の音が歓喜の調べを奏でる。
　私の全身が一塊となり、よろめきながら女に突進していく。
　包丁の刃先は静かに女の左脇腹の柔らかな肉を抉り、純白のシャツに赤い染みがじわりと広がった。

　女は跳ねるように身体を捩りながらこちらを振り返る。どうやら不意を突かれ、状況を掌握しかねる様子だった。