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 ぐしゃり。  聞こえる、というよりも頭蓋(トウガイ)に深く響いたとするのが正しいかもしれない。喉元の内側であっけなく頸椎が砕かれた。  断末魔の叫びをあげる事はおろか、涙を流すことも許されず。只とろりと粘つく生暖かい髄腋が、粉々になった破片を伝い流れだすのみだ。  既に私は事切れており、恐怖に極限まで見開かれた両目は光を失っていた。  しかし奇異な方向にねじ切られた私の首は、バランスを失いながらも残虐な破壊者の正体を見極めようと、人形遊びに飽き足らない獣をしっかりと見据えた。  四つ足で私を殺戮した黒い獣は、人形のように朽ち果てた亡骸を認めると後肢で立ち上がり、勝ち誇ったように咆哮をあげた。
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