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 しかし誰の承認も得られない秘密の関係は五年も続く頃には色褪せ、愛情に翳りが見え始めた。  三十も目前になると、田舎の両親は事ある毎に見合い話を持ち出しては、私に身を固めるよう催促する。次第に実家と縁遠くなり、口にこそ出さなかったが、私は彼との婚姻を夢見ずにはいられなかった。  そんな私の変化を敏感に感じ取っていたのだろう、彼の口から別れを匂わせるような発言が目立つようになった。  ある時、彼に 「お前といると息が詰まりそうになる」 とこぼされたのをきっかけに、とうとう私は感情を爆発させて彼を口汚く罵ってしまった。  私がどれほど惨めな想いで五年の歳月を過ごしたか。  絶望の中独り寝で過ごす、明けない夜の孤独を貴方は知っているのか。  半狂乱になって泣きじゃくる私。けれども彼は私の主張を聞き入れようとはせず、すがりつく私に罵声を浴びせ続けた。  挙げ句、居たたまれなくなった私は密会場所である赤坂のシティホテルの一室から、転がるように夜の街へと飛び出した。
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