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 私は外出するのも困難なほど打ち拉がれていた。  貯まっていた有給休暇を消費して自宅に引き籠もり、彼の訪れを待ち続けた。  そんな折に私の身体にささやかな変化が現われた。訪れた産院で、私は医師から妊娠二ヵ月であることを告げられた。  彼はいつからか積極的に避妊する事がなくなった。彼は子供好きで、本当は父親になりたいのだということを私は充分承知していた。  だからこそ二人の間に子供を授かれば、或いは出世コースを捨て私と結婚してくれるかもしれない、彼ほどの実力があれば、しがらみなどなくとも高みに上っていけるはずだと、神からの授かりものを賜った思いがした。
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