1本の蝋燭

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トアリエは仕事も完璧にこなして、振る舞いもきちんと出来るのだが 一番心を許す者には、素が出る。 その性格は所構わずな場合が多くて難点だ。 「まぁ…そう言うところも可愛くて私は好きなんだけどね」  マスター 「御主人様、何をそんなに笑っているんですか?」 庭のベンチに座っていると、フォルテが大きな花籠を持って向かいから歩いてきた。 「フォルテ!?…見てたの?」 「はい、バッチリと」 そう微笑んで言われて、私は恥ずかしくなった。 「その花籠はどうしたの?」 恥ずかしいのを誤魔化すかのように、カナンはフォルテの持っている籠を指差した。 「これですか?サディに花籠を沢山持ってくるように言われて、薔薇園へ向かっている途中なんです」 「そうなの?大変ね…手伝いましょうか?」 「いいえ、マスターは手伝わなくてもいいです。花籠も沢山あって重いですし」 「でも…」 私がまた何か言おうとすると、フォルテが顔を近づけてきて口許をあげた笑顔で 「必要ないので、気にしないで下さい」 「…そう、わかったわ」 そう、私が言うとフォルテはそっと離れて薔薇園の方へと向かっていった。 時々…いや、多分私が気づいていないときも フォルテは何処となく私に対して棘がある。 今も、始終笑顔で私に接してはくれたけれども その笑顔には裏があるようで、薄い空色の瞳だけは笑っていなかった。
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